苦い舌と甘い指先
「ジュノ…君…」
肥後は驚いた顔をしたが、すぐにそれを余裕のある笑みに変えて
「…居なくなる?どうして?
君が寂しいだけじゃないの?」
なんて、あたしを茶化す様な事を言ってくる。
「ば…っ!アホか!!そんなんじゃねぇよ!さっさと行け!!」
「はいはい。…一緒に居る所、見られちゃまずいんでしょ?
少し経ってから、おいで」
「……心配されなくても、そうする…」
モゴモゴと口の中で言うと、満足したように笑って
あたしの髪をクシャリとかき混ぜてから
「バイバイ」
肥後は一人、去って行ってしまった。
残されたあたしは、やっぱりいつもとは違う肥後の様子にモヤモヤしていて。
「……否定しろよ…。アホが…」
論点をずらして消えて言ったアイツの真意が分からなくて。
「消えないって…ちゃんと言ってけよ……!!」
何より、ちゃんと聞けなかった自分に対しての怒りが全身を苛立たせる。
「あの…馬鹿が…!!」
ガンッ!!
蹴った扉は、音を立てて開閉を繰り返していた。
なぁ、あたし、どうすれば、いい?