苦い舌と甘い指先
速足で玄関に出る。靴を履き替えてる時に
センセーがあたしを発見して、何かを言いたそうにしてたから
今度は思いっきり走って校門から出てやった。
「っあー。だりーっ!!」
校門の影に隠れて肩で息をする。
……っとに、皆ほっといてくれよ。
あたしが勉強する事が天変地異が起きる程珍しい事だってのは、自分が一番良く理解してる。
だけど。
考えないようにするのはこれが一番だったんだ。
肥後の行動。あたしの気持ち。
この二つを考えれば考える程訳わかんなくなって、ぐちゃぐちゃで眠れなくて。
眠れないから、期末考査の勉強してみるかッて気になって。
そしたら、勉強してるうちは余計なこと考えなくて済むって分かって
勉強する事で苦しさが大分和らぐから。
「だから別に楽しくない勉強もできるんだって。…言えるわけねぇけどな」
ポツリ。
誰にでも無く呟く。
勉強をし続けなければ苦しくなる。
ただ、それだけの事だ。