kiss me PRINCE!!
数秒か、数十秒か、それとも数分か。
どのくらい経ったのかはわからない。
美少女はなにもなかったかのように立ち上がり、こちらに背を向けて、来た道を戻っていった。
一瞬だけ見えた、なにも映っていない瞳の奥の闇に吸い込まれそうになった。
俺はしばらくの間、動くことができなかった。
どうしてだろう。
恐怖に似た感情が、俺を縛りつけていた。
この小さな町では見たことのない美少女。
闇をはらんだ瞳。
表情のない顔。
震えていた肩。
それらが頭に焼き付いて離れなかった。