kiss me PRINCE!!

「それがね、すごくおいしかったの!」


瞳をきらきら輝かせて、声を弾ませて亜美が言う。

昨日の夜、バレンタインの練習をしたという亜美は、その話を興奮気味にしてくれた。


そりゃあ、レシピのとおりに作ればまずくはならないでしょうね。

あたしのそんな言葉に、亜美が少し落ち込んだようにうなだれる。

うさぎの耳が垂れてしゅんとしているようなその姿を見たら、なんだかとてつもなく悪いことを言ってしまったような気がしてくる。


「まあ、クリスマスのことを考えれば、亜美も成長したんじゃない?」


湧き起る罪悪感に耐えられずに、あたしは微妙な笑顔を作ってそう励ました。

美少女、恐るべし。


クッキーはうまくできたけど、ブラウニーはいまいちだったらしい。

亜美の味覚がおかしくなければ、明後日のバレンタインデーの後も、あたしは生きていられそうだ。



そう、明後日。

二日後がバレンタインデー当日。

あたしが、ヒロに想いを伝える日。


あたしたちのこれからが決まる日。

幼馴染み以上の関係になれるか、幼馴染みですらいられなくなるか。

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