kiss me PRINCE!!
「えー、今バレンタインの話ししてたじゃん」
あたしの存在を無視するかのように、ちらりともこっちを見ないヒロに、だんだんと腹が立ってきた。
あたしはただの壁でもオブジェでもない。
ちゃんと生きててここに存在してるの。
それなのに二人で盛り上がってて。
正直に言おう。
あたしは今この瞬間、裏切り者、と亜美のことを思ってしまった。
こんなあたしにも残っていた綺麗な感情が、真っ黒に塗りつぶされていく。
今度はグレーじゃなく、真っ黒に。
心の中が燃えるように熱くなったあとに、急激に冷めていった。
大切に育ててきた想いさえも凍らせていく。
冷え切ったあたしの心を、薄い氷のように割ったのは、ヒロの言葉だった。
「亜美ちゃんがくれるものは、特別だよ」
亜美は、ヒロの、特別。