kiss me PRINCE!!

衝動的に立ちあがったあたしは、亜美の驚いた表情と視線を拒絶するようにして教室を飛び出した。

行くところが思いつかなくて、次第にあたしの脚は重くなり、ついに止まった。


振り返っても、亜美もヒロもいない。

追いかけてきてほしかったわけじゃない。

むしろ、来てほしくなかった。

でも、まだ二人して教室で仲よく話しているのかと思ったら、急にむなしさでいっぱいになる。



17年も一緒にいたのに。

たった数ヶ月の付き合いしかない亜美は、特別って言われてた。

あたしは、これからもずっとヒロの特別にはなれないの?

ヒロだけを想い続けてきたのに、そのヒロはあたしの親友を特別だと言った。

なんだったんだろう、この17年間。


馬鹿馬鹿しくて、惨めで、涙の代わりに笑いがこみ上げてきた。

自分で自分を哀れんでいたら、なにもかもどうでもよくなってくる。


心がからっぽだ。

ほんの数分前に起こったことなのに、心に残らずに、忘れられそうな気がする。

覚えていたくない。


そうやって現実逃避したあたしには、見えてなかったんだ。

ヒロの行動の理由も、真意も。

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