kiss me PRINCE!!

身体に染みついた甘い匂いを落とすためにお風呂に入っても、どうしようもないことばかり考えてしまう。

決戦の日である明日に備えてお気に入りの入浴剤を入れたのに。

そこに溶けていくのはため息ばかりで。

もったいない。


プロデュースだなんだって言ってたけど、結局この二週間、あたしはなにも変われていない。

むしろ、ひどく卑屈で臆病になった。


最近ヒロがやけに亜美に甘いなんて、そんなことを思って亜美にまで牙を向けそうになって。

前からだったじゃない、そんなこと。

気のせいにもほどがある。

大切な日を目前にして、気が立っていて神経質になりすぎているんだろう。


薄桃がかった白い湯を乱暴に波立たせて、そこを出た。


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