kiss me PRINCE!!
ヘアオイルをしっかり毛先に揉みこんでドライヤーをかける。
胸の下まで伸びた長い髪。
バレーどころか、なにをするにも邪魔なのに、もう十何年も伸ばしている。
幼稚園の頃のヒロの言葉がそうさせている。
その頃から女の子にモテていたヒロ。
そのヒロと仲がいいというだけで、あたしはひとつ年上の女の子たちに囲まれて、責められていた。
女は生まれた時から女だとか言うけど、まったくその通りだと思う。
ませた女の子たちの嫉妬心は、幼すぎるあたしにはとても怖かった。
「ヒロくんをひとりじめしないでよね!」
園庭のすみに植えられたびわの木のそばで、リーダー格の子に突き飛ばされて転んだあたし。
擦りむいた手のひらがじんじんと痛んで泣きそうなあたしを、駆けつけたヒロがかばってくれた。