kiss me PRINCE!!

「ぼく、沙世ちゃんみたいに髪の毛が長い子が好きだから!」


その場にいた中で、唯一髪が長いのがあたしだけだった、それだけなんだろうけど。

その一言が忘れられなくてずっと髪を伸ばしているなんて、恥ずかしくて誰にも言えない。


あのときヒロは、あたしのように髪が長い子が好きだと言った。

だからいつか、あたし自身が好きだと言ってほしかった。



中学まではそれと似たようなことが多々あったけど、さすがに慣れっこになっていった。

だいたいは、背の高いあたしが上から見下ろすだけでひるんでいく。

釣り合わないなんて、言われすぎて慣れてしまった。

それでも最初は、いちいち傷ついてみたりもしたけど。


高校に入れば、そんなことをする人間はいなくなった。

頭の良い人間は低レベルな次元で争ったりはしない。

それなりの学校に入れて良かったと、安心したものだった。


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