kiss me PRINCE!!
二階にある自分の部屋のドアを開けて、あたしは固まった。
ヒロがくつろいでいる。
そんなのはいつものことだけど、今は正直、顔を見たくなかった。
明日のミッションのことを思うと胃が痛くなりそうなのに。
せめてもうなにも考えずに今日は眠りたかったのに。
「いつ来たの?」
「今さっき」
あたしがドライヤーをかけている時だろう。
普段なら、玄関のドアが開閉する音は家中どこにいても聞こえるから。
いつもどおり、いつもどおり。
そう頭の中で念じながら、ベッドに上がって、置いてあった携帯を開く。
メールも着信もなし。
だけどヒロを視界に入れまいと、あたしは画面を見つめて、なにかを打ち込むふりをしていた。
それにしても、こんな時間に部屋に来て二人きりなんて、男女の幼馴染みの距離ってこれで合っているのだろうか。
もしかしてヒロはあたしを男と同じ扱いをしてるの?
彼女に昇格どころか、まずは異性として認識されるところから始めなきゃいけないのかもしれない。
これ以上落ち込ませるのはやめてほしい。