kiss me PRINCE!!
ふとベッドの足もとを見ると、雑誌が開いたままになっている。
そのページは、バレンタイン特集。
ヒロに見られたかもしれないと思った瞬間、あたしはそれをベッドの下に蹴り入れた。
「どうした?」
思いのほか大きな音が出てしまい、さりげなくしたつもりなのにヒロに気づかれた。
「べつに」
何気なさを装ったのに、出てきた声はまるでロボットみたいに固かった。
ダメだ、今日は全然普通にできない。
しかも今日に限ってなぜかヒロも喋らない。
いつもあんなにペラペラと口を動かし続けているくせに。
会話が途切れると不安とか、今さらそんな仲でもないけど。
携帯の時計は、あと10分で日付が変わることを示していた。