kiss me PRINCE!!

チョコレートの箱が当たった肩を押えながら驚いたようにあたしを見るヒロ。

その顔を見て、はっと我に返った。

自分の行動も、言ってしまったことも。

ほんの一瞬前のことなのに、後悔へと変わっていく。


あんなことを言いたいわけじゃなかった。

あんなふうに告白するつもりもなかった。

だけどあたしがしてしまったことは事実で、取り消すことはできなくて。


手っ取り早く、逃げ出すことにした。



さっと踵を返して、閉まっているドアへと向かう。

ほんの数歩。

ヒロが立ち上がる気配がする。


あたしはノブをつかんでドアを開けた。

うまくいけば、斜め向かいの兄、尚也の部屋に入ることができる。

カギをかけて、立てこもればいい。



ただ、残念なことに、そんなにうまくいくはずがなかった。


いつだって女神は、あたしなんかに微笑んではくれない。


< 68 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop