kiss me PRINCE!!
チョコレートの箱が当たった肩を押えながら驚いたようにあたしを見るヒロ。
その顔を見て、はっと我に返った。
自分の行動も、言ってしまったことも。
ほんの一瞬前のことなのに、後悔へと変わっていく。
あんなことを言いたいわけじゃなかった。
あんなふうに告白するつもりもなかった。
だけどあたしがしてしまったことは事実で、取り消すことはできなくて。
手っ取り早く、逃げ出すことにした。
さっと踵を返して、閉まっているドアへと向かう。
ほんの数歩。
ヒロが立ち上がる気配がする。
あたしはノブをつかんでドアを開けた。
うまくいけば、斜め向かいの兄、尚也の部屋に入ることができる。
カギをかけて、立てこもればいい。
ただ、残念なことに、そんなにうまくいくはずがなかった。
いつだって女神は、あたしなんかに微笑んではくれない。