kiss me PRINCE!!

「は・・・離してよ」

「やだ」

「離してってば」


返事の代わりに、またヒロの腕に力がこもる。


でも、あたしだって限界だった。

あんな恥ずかしいセリフを喚いたことも。

ヒロの息遣いさえも感じるこの距離も。



「離し、てっ!」


身体を反転させて、思い切りヒロを突き飛ばした・・・・つもりだったけど、ヒロはよろけることもなく、あたしから手を離しただけだった。

向き合って、視線が絡まる。

あたしは思わず顔を背けた。

無意識に逃げ腰になったあたしの腕を、大きな手が掴む。


真剣な眼差しが突き刺さるのを感じてしまったから。

もう、振りほどくことはできなかった。



あたしは、ヒロには敵わないんだ。

いつもふざけているこいつが稀に見せる“本気”は、あたしを動けなくさせる力がある。

< 71 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop