kiss me PRINCE!!

「さっき、なんて言った?」


さっきっていうのは、あたしのチョコじゃダメなのかとか、他の女からチョコ貰うなとか喚き散らしたあれだろうか。

それ以外にはないだろう。

思い返しただけで羞恥の炎が心の中を焼きつくしていく。

胸の内側がざわめいて、頭の奥がぼうっとしてくる。

そういえばあたし、言っちゃったんだよね。

ずっと好きだった、って。


「もう一回言って?」


黙りこくるあたしに、諭すように話しかけるヒロ。

でも、それに応えるほどの余裕があたしにはない。

表面上は無表情に固まっているだけだけど、その内部では何人ものいろんな性格のあたしが会議をしている。



『もう言っちゃえばいいじゃん、ずっと好きだったから付き合ってって』

『今のこの状況で言えるわけないでしょ?』

『また逃げればいいのよ』

『もういっそ無かったことにしちゃえば?』


積極的なあたし、楽観的なあたし、現実的なあたし、無責任なあたし。



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