kiss me PRINCE!!
それから程なくしてヒロは、あたしが投げつけたチョコを片手に自分の家へと帰っていった。
あたしは、ヒロの彼女。
ヒロは、あたしの彼氏。
嬉しいはずだし、喜ぶべきことだってわかっているのに。
あたしはどうしても、複雑な思いを捨てきることができなかった。
あたしが、物心ついたときからヒロしか見ていなかったのは事実だ。
自分にも、ヒロに対してもごまかすことのできない事実。
じゃあ、どうしてこんなにもすっきりしないんだろう。
ヒロの言葉が嘘だったとは、思いたくないというより思えない。
くだらない冗談はいくらでも言うあの口は、人を本気で騙すような嘘は絶対につかないから。
そして気がついた。
自分が、一番気にしていたことをなにも訊けていないことに。
亜美が特別って、どういう意味、って。
特別の意味はひとつじゃない。
それがわかっているからこそ、あたしは悩んでいる。
まだ、本当の意味であたしたちはわかりあえていない。