kiss me PRINCE!!
好きな人と両想いになれたというのに、尋常じゃないほど落ち込んだまま学校に着いたあたしは、教室の入り口でため息をついた。
ヒロはもう来ていた。
男子たちと、なにか話している。
気楽そうなその笑顔を睨みつけて、あたしは席についた。
「おはよ」
すかさずあたしの傍に寄ってきたヒロに、なんて言えばいいのかわからなかった。
いつもどおり、がわからなくなっていた。
それは、ドキドキしちゃって今までみたいに話せない、なんて可愛い感情ではなくて。
あたしはただひたすら戸惑っていた。
昨夜のあれが、ぜんぶ嘘のような気がしてくる。
夢じゃないことは自分が一番よくわかっているけど。
信じられないわけじゃない。
ただ、心の中に小さなとげが刺さっていて、それが気になってしかたなくて。
それが抜けるまでは、あたしはヒロの幼馴染みにも戻れないし、彼女にも昇格できない。
そう思った。