kiss me PRINCE!!

「おはよう」


寒いせいか、少し鼻を赤くしながら、それでも優雅に亜美が登校してきた。

その手には大きな紙袋。


あたしは、今のこの微妙な状況を亜美にだけは伝えておこうと思った。

でも、声をかけようとしたら亜美は荷物を置いて、さっさと教室を出ていってしまった。

廊下を見ると、コートを脱いでいるのがわかった。


亜美が戻ってきたら、どうにか隣の男をまいて、二人きりになろう。

一刻も早く亜美に聞いてほしくて、あたしはそわそわしていた。


けれど、再び教室に入ってきた亜美は、あたしに喋る隙を与えずにこう言った。



「おめでとう」


百合の花みたいな、可憐な笑顔をにじませて。



「よかったね、沙世、ヒロくん」


亜美とヒロを交互に見ると、二人は互いになにか含みのある顔で笑っていた。


もしかして、亜美はもう知ってるの?

あたしは言ってないのに。

< 82 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop