kiss me PRINCE!!
「おはよう」
寒いせいか、少し鼻を赤くしながら、それでも優雅に亜美が登校してきた。
その手には大きな紙袋。
あたしは、今のこの微妙な状況を亜美にだけは伝えておこうと思った。
でも、声をかけようとしたら亜美は荷物を置いて、さっさと教室を出ていってしまった。
廊下を見ると、コートを脱いでいるのがわかった。
亜美が戻ってきたら、どうにか隣の男をまいて、二人きりになろう。
一刻も早く亜美に聞いてほしくて、あたしはそわそわしていた。
けれど、再び教室に入ってきた亜美は、あたしに喋る隙を与えずにこう言った。
「おめでとう」
百合の花みたいな、可憐な笑顔をにじませて。
「よかったね、沙世、ヒロくん」
亜美とヒロを交互に見ると、二人は互いになにか含みのある顔で笑っていた。
もしかして、亜美はもう知ってるの?
あたしは言ってないのに。