【短編】だからそれは心の中に
「私はヴァイオリン。ねぇ、名前は?」
「え、あぁ、颯太です。ヴァイオリンかぁ、すごいな、え、クラシック?聴いてみたい」
「あはは、クラシックだけがヴァイオリンじゃないよ。しっかりロックだってできるんだから」

笑って、少し俯く。

「颯太は何で今日病院来てるの?病気?」

下を向いたと思ったらぱっと顔を上げて、また笑顔。

「ちょっとギターの練習しすぎちゃって、腕痛めて」

戸惑いつつ言うと、凜は顔を上げたときの笑顔のままで。

「腕は大切にしなきゃだめよ?腕なくなったら楽器弾けないからね」

笑い直したその顔が少し寂しげに見えたから何か言おうと思ったけど、俺ははいとしか言えなかった。
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