お弁当、温めましょうか。【短編】
平気を装ってみるけども、
心臓の音はいつも以上に鳴っている。
「ありがとごさいます」
彼女は商品を手にとって精算し始めた。
ピッピッ、と店内に音が響く。
ここで初めて店には
俺と彼女しかいないことに気づいた。
「830円です」
まつげなげぇ…と頬を染める。きもいな、俺。
彼女は商品を袋に入れ終えて、お金をレジに入れたとき
「あっ」
と小さな声を漏らした。
何だろう、と顔を覗きこむと
彼女は真っ直ぐ俺のことを見た。
目と目が合う。
多分、1ミリのズレもなく。
これってもしかして、、
と思いざるをえなかった。
そして彼女は真っ赤な顔でこう言った。
「お弁当、温めますか!?」
照れてたんじゃなくて、
焦ってたのか……。
期待させといて何だよ…。
そんな心情とは裏腹に、俺は元気に
「お願いします!」
と言った。
コンビニを出るとちょうど電車がくる頃だった。
俺は勢いよく階段を駆け上がり、駅のホームへ向かった。
――明日は話しかけよう。
ヘタレで変態な俺の片想いは
もう少し続きそうだ。
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