鏡越しの彼

いつも魅入られていた焦げ茶の瞳は瞼で閉じられていて、いつも笑っていた顔が、今は、無表情。


唇にある黒子。


右の頬にある並んだ黒子。


眉の形や鼻の高さ、輪郭、全てが朔斗そのもの。


「……朔斗……」


「工藤さん、この方は田中 朔斗さんで間違いないですね?」


「…………は、い……」


あぁ、何でなの?


朔斗が何したって言うの?


「…では工藤さん、事件の内容について説明をしてもよろしいですか?」


「はい」


「今日の午後6頃、被害者である田中 朔斗さんは帰宅途中に女子大生である近藤 星[コンドウ アカリ]に話しかけられ、路地裏に連れていかれたところ、後ろから加害者である近藤 星に首を切られた。午後6時30分頃に倒れているところをたまたま通りかかったサラリーマンが発見。しかし、田中さんは、首からの出血が酷く既に亡くなられていましたので、直接署まで運びました」





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