ヌードなアタシ
雨は上がっていた。
まだ、風は強いけど
春の風…冷たさは感じられない。
瞬くんと並んで事務所を出た。
下から巻き上げる風で
あたしの長い髪は
うねるように舞い上がる。
『うわっ…』
アタシは、髪を束ねて掴み
お店まで急ぎ足で歩く。
瞬くんは、ドアを押さえ
先にアタシを入れてくれた。
店の奥、窓側のテーブルに
向かい合って座った。
『こまちちゃん、何にする?』
メニューからアタシに視線を移す。
『あ、わたしは、お肉。
味噌漬け焼きがいいです。
これ、とてもおいしいの』
瞬くんは何故か
にっこり微笑んで
『そう…
じゃ俺もそれにしようかな』
そう言ってメニューを閉じた。
なんだか…
落ち着かない…
そっか…あたし、
男の人と二人で御飯食べるの
初めてだった…
窓の外。
雲の流れが速い…
『髪、染めてないんだね。
いまどき珍しい』
瞬くんの穏やかな声がした。