ヌードなアタシ

『これ…』


卓己くんは制服のポケットから
ミニタオルを取り出してアタシに差し出す。



『まだ使ってないから…』



白に紺色のラインの入った
柔らかいタオル地のハンカチ。

顔を覆うと洗濯したての
石鹸の香りがした。



『…ありがとう』



アタシはゆっくり息を吸い込み
喉の嗚咽を押さえ込む。



『卓己くん…知ってたの?』



『知らない。

メールが来たって
桜木校庭に行ったろう?
そん時、奈緒の様子おかしかった…』



アタシはタオルを顔に当てたまま
目だけ出して卓己くんを見た。



『2人を見つけた時
奈緒は立ち止まって動かねーの。
俺が腕を引っ張って連れて行った。
…変だと思ったよ。
最初は桜木とケンカでもしたのかと思った』



卓己くんはアタシをチラッと見て
また、話を続けた。



『1曲目からピアノ…おかしいし。
奈緒を見たら
松本さんをじっと見てるし。
松木さんは
奈緒を無視して…
桜木を見てニコニコしてるし…

2曲目になったら…アレだぜ。
バレバレだろ』


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