ヌードなアタシ

マンションの駐車場には
ケイちゃんの車があった。

アタシは玄関のドアを開けて
そのままバスルームに行く。

泣き顔を見られないように。


でも、そんな時って何故か
鉢合わせしてしまうものらしく
キレイに畳んだ数枚のタオルを抱えたケイちゃんがそこにいた。



『どうしたの!こまち…その顔』



ケイちゃんの驚いた顔。



『うん…ちょっと…
先にシャワーを浴びて
それから目を冷やすつもり。

明日のオーディションまでには
なんとかしなきゃ…』



ケイちゃんが
何か言いかけたけど

アタシは逃げるように
バスルームに入る。


何て話したらいいのか…

自分の気持ちが
まだ何も整理出来ていない。



頭から熱いシャワーを浴びる。

切なさと寂しさで
つめたく冷えたアタシの体は
あたためられ徐々にほぐれる。


泣くだけ泣いたから
少し落ち着いたのかもしれない。


頭のてっぺんから
足の先まで感じる
心地よい水の流れ落ちる感覚。


熱いシャワーで
全身を洗い流すように

アタシの心の濁った痛みも
いっしょに洗い流せたらいいのに。

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