ヌードなアタシ

アタシが恋する気持ちを代弁…

でも、長沢さん…
今のアタシは
恋してハッピーな状況じゃないよ。

悲しくて辛いもん。



待合室には
夏色のファンデーションと書かれた
昨年のCMポスターが貼られていた。

涼しげな表情のハーフのモデルが
海辺で微笑んでいる。

青い空、青い海、青い瞳…



『長沢さん…
アタシ、今、あんなふうに笑えるかな…』


ちから無く尋ねた。



『そうねぇ…
もし私がメーカーの担当者なら
あのモデルのように笑う人は要らないわ。

だってそうでしょう?

それなら、あの子に
今年も頼めばいいんですもの。

…こまちちゃんは
こまちちゃんの持ってるモノで
勝負するしかないんじゃないかしら?』



アタシの持ってるモノ…?



『さっきも言ったわ。
恋をすれば、女は綺麗になる。

でも、それだけじゃ深みは出ないの。
傷も、また…女を磨くの』



ドアが開き、アタシの名前が呼ばれた。



『あなたらしく…ね』


長沢さんは、アタシの肩を軽く叩き
微笑んで送り出す。


アタシは浅く深呼吸して
気持ちを整え席を立った。

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