ヌードなアタシ
事務所を出た帰り道
ケイちゃんのスタジオに向かった。
所属モデルとして契約したアタシは
それ以来、ケイちゃんの仕事を
手伝うことが無くなってしまった。
ケイちゃんがアタシの写真を撮るには
事務所を通して依頼しなければならない。
勝手に手伝うことは、もう出来ない。
久しぶりのスタジオ。
そっとドアを押し開けた。
写真取りの真っ最中。
ガラステーブルにケーキを置き
ライトを調整しながら撮影していた。
アタシは静かに玄関脇の椅子に腰掛け
撮影を続けるケイちゃんを見ていた。
アシスタントの藤井さんが
アタシに気がつき微笑みかける。
アタシは、声を出さずに
『待ってます』と椅子を指差し
口の動きで伝える。
藤井さんも『0K』と指でサインを送り
口の動きだけで答えた。
写真を撮り終え
カメラを置いたケイちゃんに
藤井さんがアタシの来訪を伝えた。
『うふふ、いらっしゃーい』
一休みしましょう、と藤井さんに声を掛け
ケイちゃんはアタシに
応接室で待っているよう手招いた。
ソファーに座っていると
珈琲カップを両手に持ったケイちゃんが
勢いよく入ってきた。
『もうっ!こまちっ。いいんじゃなぁい?
CM見たわよ…可愛いわぁ』