ヌードなアタシ

『アタシちゃんとしてた?
ケイちゃんから見て魅力ある被写体だった?
…恋する女の子だった?』



ケイちゃんの元を離れ
一人前のモデルとして臨んだ
初めての大きな仕事。

運とか事務所のしがらみだけじゃなく
プロのモデルとして
通用しているのか不安だった。



『…ゾッとしたわ』


ふっ、と悲しげな真顔になって
ソファーに腰掛けたケイちゃんは
ひと息おいてから話し出す。



『失恋して泣いてたのよ、ビービーと。

自分の感情を上手くコントロール出来ずに
戸惑って、落ち込んで、
今でも、まだ引きずってるコが…

スタートの合図で
あんな…心から満ち足りた
幸福感溢れる笑顔になれるモノなの?

感心したというより
…心が痛んだわ。

まだ、あなた位の年頃のうちは
素直に感情のままの自分を
表現するものよ。

私には、こまちの恋する微笑みの奥に
傷ついた悲しさが見えて…
涙が出そうだった。

苦しかったね。
がんばったねって』



『…えっ?』


思ってもいなかった言葉に驚く。


『そんな事ないよ…
撮影、苦しくなんかなかった』


笑って反論したつもりが
アタシの目に涙が滲む。


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