ヌードなアタシ

ケイちゃんはワインとグラスを持って
テーブルについた。

ワイングラスにはたっぷりの氷。


『邪道なんだろうけど
こうやって飲むのが好きなのよね』


氷の合間を縫うように
鮮やかな赤い液体がグラスを満たした。


『CMの反響凄いみたいね、
長沢さん張り切ってたわ…
次のオファーは雑誌のモデルなんだって?』


冷えた麦茶を持ってきたアタシ向かって
ケイちゃんは『はい、カンパーイ』と
グラスを当てた。


『乾杯!
ファッション誌の専属モデルだって…
年間の契約だから色々決め事があるみたい。
明日、社長同行で打合せだよ』


『忙しくなるって言ってたわ、大丈夫?』


『うん、言ってた。
夏休みは、秋物の撮影タップリあるって…
汗だくだね』


『あはは、そうね。
屋内はエアコンあるから平気だけど
ロケはキツそう…根性の見せどころよ』


『うん、新人は文句言わずに頑張る!』


『あたりまえよ、
小娘が文句なんて100万年早いから』


『…怖っ!』


アタシは笑いながら餃子を食べ、
ケイちゃんのグラスにワインを注いだ。


『……なんかさぁ、
分かっていた事なんだけど』


突然しんみりとした声で
ケイちゃんが話し出した。
< 287 / 346 >

この作品をシェア

pagetop