ヌードなアタシ

『こまちは親離れしていくんだよねぇ。

私のカメラのレンズの中で笑ってた
幼いこまちは、業界の最先端で仕事してる。

嬉しいのよ!すごく嬉しいの…
でも、その反面、ちょっと寂しいなぁ。

…あれね、
娘を嫁に出した父親の心境ってヤツよ』



『やだなぁ、もう、酔っ払った?』


そう言いながら
アタシも心の中でつぶやく。

アタシだって…
ケイちゃんに撮ってもらいたい。
今のアタシをどんなふうに撮ってくれる?


『家族写真を撮ろうよ!』


『へっ?』


『だって、
ケイちゃんと一緒の写真って無いじゃん。
タイマーので撮ろうよ。
シャッター押して急いで並んでパシャって』


『えーっヤダぁ…
そんなシロウトっぽいの…』


『約束っ、決まりっ!』


ブチブチ言いながらも
じゃあ、いつ撮る?と、ケイちゃんは
ヤル気満々でスケジュール帳をめくった。

アタシもバックの中をまさぐり
手帳を出した。
携帯の着信ランプが点滅していた。


『あ、卓巳くんだ…なんだろ?』


署名のコトかな?
電話してみる。


『もしもし?卓己くん?』

『あ…桜木。…今、大丈夫?』

『うん、平気…』


卓巳くんの声のトーンの低さが
楽しい話題じゃない事をアタシに伝えた。

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