ヌードなアタシ

店内は、まばらに席がふざがってる程度で
そんなに混雑していなかった。


卓己くんはテーブル席に1人で座っていた。

アタシを見つけ
珈琲を持った手を軽く挙げて合図する。

アタシはココアを持って
卓己くんの向かい側に座る。



『桜木、おまえ、俺の横に座れ。
奈緒と向かい合って話したいんだ…』


『え?……う、うん、わかった』


アタシが卓己くんの隣に座り直した時
卓己くんはボソリと、つぶやいた。


『…奈緒、来たぜ』


アタシは入口を見た。

奈緒はアタシ達を見つける。

でも、これといったリアクション無しに
カウンターで飲み物を受取った。


『突然呼び出してワリぃな…
桜木と連絡つかなかったから
奈緒と2人で話そうと思ってたんだけど。

さっき、連絡取れたから来てもらった。
3人で話した方がいいと思って』


『…なにを?』


ぶっきらぼうに奈緒が言った。


『少し前に、偶然、松本さんと会って…
俺、別に話す気なかったんだけど
彼に呼び止められてさ…』


『……瞬くんの話だったら、もういいよ!
わたし別れたから、彼と』


奈緒はアタシ達の顔は見ないで
珈琲に視線を落として話す。


『あぁ…松本さんも、そう言ってた。
でも別に、そんな話はどうでもいい。

なぁ、奈緒
これに見覚えあるだろう?』


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