ヌードなアタシ
交差点の角を曲がる。
大きな灰色の建物が見えてきた。
いったん通り過ぎ左折したところに
あまり広くはない駐車場があった。
『よかった、空いてるわ。
外来診療の時間が終わってるから、ね』
駐車場の奥まで進み
建物の裏口のそばに車を停めた。
裏口から受付のあるロビーまでは
長い廊下でつながっていて
天井につり下げられた案内板を確認しながら
アタシ達はロビーまでの道のりを急いだ。
受付で確認して病室に着くと
ママの彼氏が廊下の長いすに座っていた。
アタシ達の足音に気づき顔を上げる。
『姉さんは?』
『まだ、処置中だ…』
病室のドアのプレートには
集中治療室(ICU)と書かれている。
『先生は、なんて…?』
『クモ膜下らしい、出血の量が多くて…
まだ止まらないらしい。
さっき看護婦が来て
後で先生から説明があるって言ってた』
『そう…』
『おれ…これから用事あって…
ここ、もういいか?』
『はぁ?』
ケイちゃんが、凄い顔で睨みつけた。
『べつに…結婚してるわけじゃねぇし
おれ、金ねぇから…
病院の事とかは、そっちでやってくれ。
…それに、急ぎの用事なんだ…』
ブツブツと不満げに
自分は関係ないからと繰り返す。