ヌードなアタシ

集中治療室はエレベーターを降りて
ずっと先の突き当たりにあった。

そのせいか人は殆ど通らない。

なにも変化が起こらない状況…
考える時間だけが、たっぷりとあった。


何度か時計を見たが
いっこうに針は進んでいない。




不安な思いだけが頭をよぎる。



隣にいるケイちゃんは
寄りかかるように壁に頭をつけて
静かに目を閉じている。

アタシは、そっと
視線を目の前のドアに戻して
誰かが出て来るのをじっと待っていた。







不意にドアが開く。


アタシ達の視線を避けるように
看護婦さんがバインダーを抱えて
小走りに出て行った。


その後ろ姿を目で追っていると
またドアの開く音。


先生がマスクを外しながら出てきた。

ケイちゃんが立ち上がった。



『桜木さんのご家族の方ですか?』


『はい。あの…姉は…?』


『病状の説明をします。
看護婦に付いて病室に入って下さい』


後から出てきた看護婦さんが
『どうぞ、こちらに…』と言って
アタシ達を先導した。
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