史上最強お姫様の後宮ライフ覚書
――一方、セルスト帝国でのこと。
「お前らの実力はその程度なのか!?さっさと死ぬ気で俺にかかってこい!!」
王宮の外れに位置する小さな中庭に、叱咤する声が響き渡った。
剣を構えながら叫ぶその青年は、つい先ほど新人の王宮警護兵達へ稽古をつけるよう近衛隊長に言いつけられたのだが、その数時間後である現在…
警護兵達は疲労困憊、といった様子で、数十人が地面に倒れたまま酸素を取り込もうと肩を上下させていた。
これだけの人数相手にして息が全く切れないなんて、アンタは化け物かっ!?
警護兵達は揃って心中で叫ぶが、決して口に出すことはない。
第一に呼吸をすること自体が困難なこの状況で声を出すなど不可能であるし、第二に本人の目の前でそれを言う勇気のある者がここには誰も居なかったからだ。