史上最強お姫様の後宮ライフ覚書
そして、部屋から抜け出したリスティーヌが最初に向かったのは、祖国ラキアヴェルでも有名な「女神の噴水」だった。
セルスト陛下や王族が住まうこのリディア宮殿。
その中心にあるのが、世界一美しいと言われている「女神の噴水」だった。
ちなみに、「女神」といってもそれは初代セルスト国王の妻をモチーフにした銅像で、前々からリスティーヌも拝見してみたいと思っていたのだ。
「うん。良い機会だし、見に行こう!」
嬉々としながらリディア宮殿を闊歩するリスティーヌ。
時折、巡回兵とすれ違うこともあったが、特に引き留められることもなく、逆に小さく挨拶をするリスティーヌの行動を怪しむ者は誰一人として居なかった。
何しろ今の服装は「ラキアヴェルの姫様付き侍女」であって、余程のことで無ければ咎められることはない。
さらに、今日着いたばかりということもあって、もしもの場合でも「道に迷ってしまった」などと言えば免れることは簡単だろう。
それも計算に入れた上で、リスティーヌはこの「散歩」をこのタイミングで決行したのだった。