史上最強お姫様の後宮ライフ覚書
しかし、ふと彼は自分の足元に見慣れない一束の書類が落ちていることに気づいた。
どうやら、表紙を見る限り今日この国にやってきたとかいう新しい正妃候補に関する情報が書かれているようだ。
「全く…書類を落とす馬鹿がどこにいるんだ…」
今は既に部屋を去った弟に対する愚痴を溢しながら青年はその書類を手に取ろうとする。
――その時だった。
キィン、という鉄製の音が彼の耳に届き、青年は勢いよく窓のほうを振り返った。
そして、耳を済ましてみればその音は未だ聞こえる。
思わず彼は部屋の窓に手をかけて開け放てば、目に入ったのは闇夜の中で黒ずくめの男と剣を交える少女の姿。
どうやら男は少女を狙っているようだ。
普通ならば、助けを呼ぶか助けにいくかをするべきなのだろう。
だが、どう見てもその戦いは少女のほうが圧勢。
そして、不覚にも女嫌いの青年は、そんなリスティーヌの姿に魅了されてしまったのだった。