サクランボ。
『愛ちんってー、来輝のこと好きでしょ』
高1の一学期の半ばごろから、ずっとコレばかり坂本は言ってくる。
一体、何を根拠にこんなこと言って来るのだろう。
「は、早く私達も行かないと、遅刻になるよ…!」
気がつけば、周りにはいつの間にか人があまり居なくなっていた。
「え!愛ちん、一緒に行こうって誘ってるの?わーい、嬉しいー♪…って愛ちん?あれ?何で先に行くんだよー!」
「…ばか」
さっきまで、真剣な顔だったのに、またいつもみたいに戻って…
私はコイツが分からない。
多分、一生分からないかもしれない。
あの目を見てると、なぜだか時々、
泣きそうになる。
…あぁ、桜がこんなにも綺麗だ。
あの時も、こんな綺麗な桜だった気がする。
高校一年の春。
私達が出会った、あの春━…