サクランボ。
2・来輝と姫
ばかの考え
ヒラヒラ舞う桜は儚く散り、
ただただ虚しい。
━高校一年、春
「あんれー?愛ぁー!体育館どっちだっけ?」
「わかんないけど、みんなあっちに向かってるから、あっちかな?」
スゴイ人だかりが、私達の周りを囲っている。
あれは、私達の入学式。
新入生はちょうど体育館に集まる時だった。
いまいち場所がわからなくて、私たちはウロウロしていた。
人の流れにのってたら、いつかは着くだろ。
桜の木が立派にそびえ立つ道を、私達は人の流れにのせて歩いた。
「綺麗な桜だねー愛!」
「そうだね。」
姫は嬉しそうに桜の木を見上げた。
そんな姫を見ていたら、こっちまで嬉しくなる。
どんっ━━━!
「きゃっ」
「姫っ!?大丈夫?」
「へ、へーきー…」
桜を見すぎて人にぶつかるなんて、姫は相変わらずドジだ。
「あぅ、ごめんなさい…」
姫がぶつかった男は、こちらに背を向けたままだった。
大きい背中…
「あのー…ごめん…なさい?」
「あぁん??」
「「ひっ!」」
その男はこちらを向いた瞬間、ギロリと私達を睨みつけた。
「ごごごごごめんなさい!アタシま、前見てなくて…!わ、わわざとじゃないっす!ごめんなさい!」
姫、キョドりすぎだから…
「…ふーん」
「え?」
ふーんって…
嫌ーな目でこちらをじろじろと見つめる。
こいつ、なんか嫌な奴っぽいと私は瞬間的に思った。
やんきーみたいな…
「ちっさいから、ぶつかったのが小学生かと思った。」
「はぁ?」
何こいつ…!
私達の生まれつきのコンプレックスを!
やっぱ思ったとうり、嫌な奴だ!
姫もこの男の発言が気にさわったらしく、睨みつけている。
でも、ぶつかって悪いのはコチラなので、言い返す言葉がない。
「はん。まーいい高校生活を。小学生★」
ヒラヒラと手を振り、男は体育館の方に行ってしまった。