パラワー『天才・原口龍太郎博士のエトセトラ』

この世界の科学者は最低限の運動さえしない。それは学者を志す学生にも根付いている。

勿論流も博士二人と同じように、2つのタイヤが付いた細めのドラム缶のようなものにすっぽり胸まで入っていた。


『驚かせてしまったかな？　このラボは歩行可能なんです。ちょっとバイオ・インフォマティクス棟に届け物が有りましてね、へ、ヘックション。フンッ』


「ここの博士はクシャミ付きだぁぁ」


肩を叩き合ってウケていた純一郎と流だが……。


「なんですって？」「今何て言ったんすか！」


ラボが歩くなんて、彼らが考えてもみなかった事態だ。


「そうか。フンッ、これが巨大ロボだったわけですな？」


『ハハハ……ックション。フンッ、もっとあとでお見せしようと思ったんですがね』


Ａ.Ｗ.Ｔ.を降りた流達が眩しさに目を細めて見上げると、彼らの頭上には太い2本の足で立つ、観光バスを3台横に並べたような大きさの物が雨を遮っていたのだ。