屍の孤島
ぶつけた額を片手で押さえ、夕映は目の前の背中を見る。

何故立ち止まっているのだろう。

誰かが降りるのに手間取っているのだろうか。

列の先の方を覗き見る。

…秀一は固まったように動けなくなっていた。

彼だけではない。

彼の前を歩く奏も。

その前を歩く小野寺も。

どこか堅気でない印象を受ける鏑木でさえ。

その目前の光景に愕然とし、思考すら停止しているようだった。

「あ…がぁ…ギギギ…」

一足先に船を降りていた操舵手の老人。

その老人の背後から、島民らしき男が歩み寄ってきて…老人の首筋に噛み付いていた。

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