屍の孤島
噛み付いているといっても、生半可な噛み付きようではない。

肌に歯が食い込み、皮膚を食い破り、血が溢れ出すほど強く咬合する。

噛み合わせた歯の間からメキメキと音が聞こえた。

頚動脈が断裂したのだろうか。

老人の首筋から、時折血液が噴水のように噴き出す。

その出血に合わせ、ビクン、ビクンと痙攣を繰り返す老人。

既に意識を失い、口元から泡を吹いている。

危険な状態なのは一目でわかった。

だがその場にいる誰もが、老人を助けようとしない。

助けられないのだ。

老人に噛み付いている島民らしきその男が、あまりにも常軌を逸していたから。

土気色の肌、白濁した白目を剥いた眼球、薄汚れた衣服。

動きは緩慢で、足取りは歩くというよりも引き摺るといった印象。

なのに老人を押さえつけるその腕だけは考えられないほど力強く、爪痕が老人の体に深々と残るほどだった。

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