屍の孤島
その発言が気に障ったのは、正義感の強い秀一だった。

「おい、あんた。それはないんじゃないのか?」

ツカツカと鏑木に歩み寄る。

「もし彼女に何かあったらどうするんだ?外はゾンビで溢れ返ってるんだぞ?」

「ハッ」

紫煙と共に、鏑木が嘲笑を吐き出す。

「オシメのとれてねぇガキじゃあるまいし…そのくらいの事自分で理解してるだろ…わかりやすく言ってやろうか?」

冷酷な薄笑みが、鏑木の顔に浮かんだ。

「死ぬも生きるも、あの小娘の責任だ。俺が尻拭いしてやる道理はない」

「っっっっ!」

その言葉にカッとなり、秀一が拳を振りかぶる。

暴力は好きではなかったが、鏑木のその発言だけは許せなかった。

対する鏑木は、秀一よりも素早くジャケットの懐に右手を滑り込ませる。

連絡船内で見せたのと同じ動作。

しかし出したのは携帯灰皿ではなく。

「!!」

プラスチックパーツを多用した、オートマチックのハンドガンだった。

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