屍の孤島
「あ、あのっ…」

この緊迫した状況下で、鏑木に話しかけたのは奏だった。

「鉄砲持ってるんなら…私達を助けてくれませんかっ…その鉄砲で…外のゾンビをやっつけて下さい…」

「ふ…はははははははっ!」

奏の言葉に、鏑木は笑う。

こんな可笑しい事はないといわんばかりに。

「揃いも揃っておめでたい連中ばかりだな!どうにも緊張感のない奴らだ」

秀一の額に突きつけていたグロックを引き、鏑木は彼らに背を向ける。

「まぁ平和ボケしたこの国の連中ならこんなもんか」

その言葉が最後。

彼は秀一達に二度と振り向く事なく、フェリーターミナルを出て行った。

鏑木もまた協力してこの島からの脱出する事を拒み、たった一人での行動を選択したのである。

< 32 / 199 >

この作品をシェア

pagetop