屍の孤島
小野寺とて、奏の言いたい事はわかっている。

その上で。

「不必要とは限らないさ」

彼は奏に優しく説いて聞かせる。

「こんな状況下だ。ゾンビに傷を負わされる可能性だって十分に有り得る。そんな時の為に、幾らかの薬や包帯は確保すべきだ。出来るだけの備えはあった方がいい。僕は医師なんだ。健康状態の維持をオススメするね…精神科医だけど」

つまり医薬品の入手の為にも、病院に立ち寄るのは無駄ではないという訳だ。

「……」

本来なら脱出に不必要と思われる場所に訪れる事を、小野寺は正論として受け止めてくれた。

その優しさに感謝し、夕映は軽く頭を下げた。

「それなら」

奏が持っていた旅行鞄の中から旅行雑誌を取り出す。

陰島の観光ガイドだ。

簡易ながら、島の地図も掲載されている。

彼女はそれを広げた。

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