屍の孤島
そんな梨紅が、先程から苛立っている。

波が荒くなり、酷く揺れ始めた船内。

船酔いしそうだ。

久し振りに実家のある陰島に帰るというのに、この酷い乗り心地の船は何だろう。

一度は世間に持て囃された天才女優の桜庭梨紅を、こんなボロ船に乗せるなんて何様のつもりよ。

(これだから田舎は嫌いなのよね)

心の中で毒づきながら、船内を見回す。

こんな揺れる船内だというのに、グッスリと眠っている女性の姿が目に止まった。

見た感じ、梨紅と同年齢か年下に見える。

よくこんな酷い乗り心地の船で眠れるわね。

熟睡している女性に内心呟きながら、梨紅は苛立ち混じりの溜息をついた。

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