屍の孤島
砂利道を塞ぐように倒れる亡骸を、躊躇いもせずに踏みつけて先に進む。

右手には雑木林と傾斜。

そして左手側…海沿いにはスレート葺きの大きな工場があった。

大きな看板が鏑木の目に留まる。

『陰島造船所』

それはこの島の主力産業である船の建造を仕事としている工場だった。

造船所か…運が上向いてきたか。

そんな事を思いながら、足を踏み入れる。

油臭い匂い。

鉄板や鉄骨が床に無造作に並べられている。

工場の隅にはドラム缶が幾つか。

この匂いは船の燃料である重油だろうか。

溶接器具に使われるガスの大きな缶も置いてあった。

如何にも男の職場といった風情。

しかしそんな工場に、人の気配はまるで感じられなかった。

< 85 / 199 >

この作品をシェア

pagetop