屍の孤島
鏑木独自の理論だが。

そもそも気配という奴は、生きている人間からするものだ。

くたばった奴からは当然気配などしない。

命あるものだからこそ気配はする。

だから。

「っ!」

素早くグロックを構えて振り向く。

彼の背後に近づきつつあったゾンビどもには気配などない。

音もなく忍び寄り、その摺り足や生臭い息遣いを感じ取った時には手遅れ。

港で見たあの操舵手の老人のように、後ろから頚動脈でもガブリと齧られて終わり。

後は自分も気配のない死体の仲間入りという訳だ。

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