RESUME OF LOVE
お店の中で食べることも出来るみたい。仕事帰りの人、学生。空席なんてないくらいの勢い。
「これだけお客さんがいるなんて、見たことない」
やっぱり負けたくない気持ちは先輩もわたしもあったのに、愕然とした。
いつもだったら目に入れずに改札を抜けていくのに、今日に限って見ちゃうんだもん。
それに見たくないものまで目に入った。目をいきなり反らしたわたしに、不思議がってる先輩。
先輩が気付かないうちに、ここから逃げ出したい。
「電車間に合いませんよ、早く行きましょう」
先輩の腕を無理矢理引っ張る。
「な、なに?」
「電車、逃したくないですもん」
先輩の勘は当たってた。わたし達のパン屋さんより、新しいパン屋さんのメロンパンなんだ。
その重そうなギターケース通路に置いて、ニコニコしてる王子様。
その笑顔は、彼女仕様?
改札口を抜けて先輩と分かれる。不思議そうな顔はそのままで、大きく手を振ってホームに消えていく先輩。
携帯を取り出してメール作成画面を出す。こんなときは龍くんとメールしたい。
何気ないやり取りして、メールが返ってくるのを待ってる自分がいい。あのワクワクする気持ちになりたい。
「今日だけはわたしから」
呟いた声も電車に掻き消される。今日はわたしからメールしてみる。いつもはしないこと。
それだけさっき見た光景が衝撃的だったんだ。