幕末純想恋歌

お梅に言いくるめられ芹澤の部屋へとやって来た。


すごく緊張する。

はじめての印象が怖すぎたのだ。



「芹澤様?梅でございます。いらっしゃいますか?」

「…お梅か。入れ。」


中から低く渋いあの芹澤の声が聞こえてきた。


「失礼します」


お梅が静かに襖を開け中に入る。


「こんにちは、芹澤様。先生、ちょっと今日はこの子に会ってほしいのだけれど…、おいで?」


「失礼します」


「…ん?お前は確か…、女中の…、…葵とか言ったか。…どうした。」


驚いた。

芹澤は葵の名前を覚えていたのだ。


「…え、あの…」

「いえね、この子が先生にあまり会ったことがないって言うからね?…この子に会ったときお酒入っていたのでしょう?怖いそうよ?」

「お梅さんっ!!」

言うなんて。


「ほぅ…。」


芹澤がニヤリと笑った。



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