幕末純想恋歌


芹澤がニヤリと笑った。


かなりの悪人面だ。


背筋が冷たくなる。



「…ッフ、ハッハッハッハ!!」


芹澤が突然笑出した。

葵が目を丸くする。

何故笑うのかが分からない。


「怖い、怖いか!!そうだろうな!!優しいなどと思う人間はいるまい。それにな、お前の感覚は正常だぞ!?あの時、わしは殺気を出していたからな」



まだきょとんとしている。


「まだ、怖い?」


お梅が微笑む。



「…なんか、…なんか怖く…ないです。」


「ふふふ、」

「ハッハッハッ」


怖くない。

なんか全然怖くない。


芹澤が笑う様子は、まるでガキ大将のような、いたずらの成功した子供のような…

屈託のないものだった。



芹澤がまたニヤリと笑った。


「饅頭があるぞ。食べるか?」


「はい、いただきます」



もう、怖くなかった。



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