幕末純想恋歌

「何も起きねぇといいがな」


皆の姿が見えなくなるまで葵と土方は見送っていた。


「大丈夫ですよ、皆さんとても強いですし、芹沢さんも近藤さんもいらっしゃいますし」


「それが心配なんだよ」


土方が眉間に皺を寄せて呟く。

何故それが心配なのか分からなくて、首を傾げる。


「お前が来てからは大人しくしてたがな、それまで芹沢さんは相当暴れてた。気に入らないことがあればすぐにキレてな、手をつけられなかった。また何か、騒ぎを起こすんじゃねぇかと心配で堪らねぇ」


「大丈夫です。だって、芹沢さん、とっても優しいです。何も起きません」


土方が怪訝そうにする。

「おめぇ、いつの間に芹沢さんと……。まぁ、何も起きないことを祈ってるさ。お前もさっさと中に入りな」


土方が建物の中に入ってく。


「何も起きませんよ、大丈夫です。」


その背中を見ながら葵は呟いた。



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