幕末純想恋歌
「あの…、助けていただいて…」

「こっちは終わったきに」

お礼を言おうとしたとき、土佐弁の大男が戻って来た。


「おまん大丈夫かえ?」

「あ、大丈夫です。助けていただいてありがとうございました。」

「礼なら要らん。当然のことじゃ」


「ねぇ、君ってどっかの女中さん?荷物からして。今度街に出るときは誰かと一緒にしな?今の京は危ないから」


「いつもなら沖田さんとか着いてきてくれるんだけど、今は人手不足で…」


「ふ〜ん、なら大丈夫だね。あ、お団子どうぞ?」

「いいんですか!?いただきます!!」


「甘いの好き?」

「はい!!大好きです!!」

「ふふっ、それは良かった。ところでさ、」

「はい?」

「さっき君、沖田って言ったよね?もしかしなくても君、壬生浪士組の娘?」


「!!!!!!」


失敗した。
言うべきじゃなかった。


今更取り繕うのはかえって不自然だ。


「…そうですよ?それが何か?」

「いや?そうか…そうなのか…。ねぇ、君名前は?」

「葵です」


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